2016年1月1日金曜日

蓮池透著「拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な人々」(講談社刊行)より―ファナティック(fanatic, 狂信的)な言論とは何か

「いかに北朝鮮が報告しやすい環境を作るか・・・これが日本政府にとって大きな課題なのである」(同書p65)


「大きな構想力を持って日朝双方にメリットがあるような絵を描き、最終的には日朝の国交正常化を目指して北朝鮮側と真剣に交渉すること。」(同書p278、青木理氏の発言より抜粋)。



蓮池透さんは、北朝鮮に拉致された蓮池薫さんのお兄さんです。薫さんが昭和53年7月31日に突然消え去って以来、透さんは必死に弟さんの行方を捜してこられました。

当時は北朝鮮に拉致されたなどわかるはずもない。御両親は「家出人捜索番組」で「薫、このテレビを観ていたら連絡ください」と訴えられたそうです(同書p35)。

ようやくかかってきた電話は「東京の山谷で見た」「名古屋のパチンコ屋で見た」というものでした。それでも御両親は山谷の木賃宿を、薫さんの写真をもってまわりました。

透さんは名古屋のパチンコ屋を、薫さんの写真をもって「この人を知りませんか」と巡られたそうです。御家族の心痛、心労はどれほどのものだったでしょう。

蓮池薫さんは北朝鮮工作員に眉間のあたりを突然殴られた


薫さんが帰国されてからわかったことですが、薫さんはのちに奥さんとなった祐木子さんと二人で海岸に座っていました。

背後に嫌な気配を感じたところ、屈強な男が「おい、煙草の火を貸してくれないか」と日本語で話しかけてきました。

薫さんが「いいですよ」とライターを差し出したところ、突然ガツンと眉間のあたりを殴られました。

一時的に視力を失った薫さんは、体中をロープで縛られ、大きな袋に詰められたそうです(同書p37-38)。祐木子さんも袋に詰められ、二つの袋は人目につかないところに隠されていたそうです。

あたりが真っ暗になり、薫さんたちは接岸してきたゴムボートに乗せられ、沖の母船まで連れていかれ、北朝鮮に連行されました(同書p38)。

本書は、北朝鮮の国策として行われてきた日本人拉致の手法を具体的に暴いています。

テロ国家北朝鮮に通常の「話し合い」「交渉」は成立しない


これほどの残酷行為を断行する北朝鮮に対して、上述のような普通の国家との外交手法で「交渉」「話し合い」が成立するでしょうか?

普通の「交渉」「話し合い」が北朝鮮当局と成立するなら、拉致された日本人の皆さんがじっくり拉致した連中と話し合えば帰国できたはずです。ありえない。

拉致した日本人の皆さんが北朝鮮当局とじっくり話し合えば帰国できたはずだ、などという主張は私には「ファナティック」と思えます。

こんなことを言う人はいないでしょうが、北朝鮮と「交渉」「話し合い」だけを主張する方ならそういってもおかしくない。

日本の右派勢力により北朝鮮が日本人拉致について報告しにくい環境が醸成されているから、報告ができなくなっているのではありません。

そんな繊細な神経の持ち主が突然他人の眉間を殴るはずがない。

私はある元北朝鮮工作員(在日の方)から、「つがいで連れてくると精神が安定して良い、と向こうの奴は言っていた」という話を伺いました。つがいとはペアという意味です。

「日朝双方にとってメリットがあるような絵」とは具体的に何か不明ですが、北朝鮮当局に何らかの形で金品を渡すなら核ミサイルや生物・化学兵器開発資金となるだけです。

食糧支援、電力などのインフラ整備でも同様です。日本の資金と技術で発電所を作れば、政治犯収容所の周囲に張り巡らされている鉄条網の高圧電流にされてしまいます。

「北朝鮮と真剣に交渉」とやらをしているだけなら、拉致した日本人は全員死んだからそれを認めろ、日本人妻を数名一時帰国させてやるからそれで大金をよこせと言われるだけです。

「拉致問題の解決」とは、拉致した日本人全員を直ちに返すこと、拉致指令を出した金日成、金正日の残虐行為と奢侈生活を公開し、金正恩が日本人と日本国民に謝罪と償いをすることです。

このために、日本政府は対北朝鮮ラジオ放送や海外衛星放送で金日成、金正日の残虐行為と奢侈生活、特に金正日の派手な女性関係を暴露するべきです。

これをやれば金正恩は全力で日本を脅迫してくるでしょう。そのとき日本政府は、「放送をやめてほしければ横田めぐみさん、有本恵子さん、増元るみ子さんらを返せ」と放送で言えばよい。

「最高尊厳」とやらを徹底批判すれば北朝鮮当局は激高し「真剣な交渉」「対話」ができるのです。

金正日と高英姫の愛情物語を海外衛星放送でドラマ化して放映するべきだ


金正恩が拉致した日本人を返さなければ、金正日と高英姫、金正日と他の女性たちとの愛情物語をドラマにして海外衛星放送で放映するのも良いでしょう。

金正日の正妻になることを、故高英姫は切願していたに相違ない。しかし元在日朝鮮人という出自の壁は、金正日でも超えられなかった。金正日は金日成に高英姫の存在を言えなかったのです。

最愛の女性を、父に紹介すらできなかった金正日はどんな気持ちだったでしょうか。

金正日は30代から40代にかけて、側近の張成澤らと毎晩のように、「喜び組」を侍らせて豪華な酒宴を催していました。酒宴でも金正日は気を抜けなかった。

金正日は側近たちの動向を酒宴で探っていたのです。

独裁者の孤独さを、西側社会の自由な雰囲気を体得している元在日朝鮮人高英姫は推し量れたのではないでしょうか。

ドラマの主題歌を韓国の実力歌手WAXにお願いしたらどうでしょうか。

番組には、金正恩と妹金予正の役も出てくることになるでしょう。中国で脱北者を逮捕するために動いている国家安全保衛部の皆さんが視聴者となって下さるかもしれません。

ふざけるな、と蓮池透さんは言うかもしれません。

しかし北朝鮮当局のいう「最高尊厳」とやらを北朝鮮の一般国民が気軽に批判できるようになったら、拉致した日本人を監視している連中を買収するのは難しくない。

「首領冒涜罪、皆でやれば怖くない」という状況を北朝鮮国内で形成するような思想攻撃を北朝鮮にするべきなのです。首領冒涜罪の蔓延により国家安全保衛部の機能を麻痺させねばならない。

日本政府の対北朝鮮政策を「圧力と思想攻撃」に転換するべきなのです。

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